蝶から花へ、翩翻(へんぽん)と

このたびは桂 蝶六改め、三代目 桂 花團治御襲名、誠におめでとうございます。

蝶六さんに初めてお会いしたのは、私ども大阪青山大学健康科学部に新しく健康こども学科が誕生した平成二十年の、新緑の映える五月の午後でした。新学科開設を記念しての公開講演会の講師としてお招きしたときのことです。

講演でお話戴いた内容は、「落語の眼差しー人間をどう見るかー」といった演題のもとで、落語に登場する人物の温かい滋味溢れることばやしぐさ、また、それを演じる落語家の登場人物に向ける眼差しについてのお話でした。とりわけ、子どもに向けるやさしい眼差しについては、新学科の理念に誠にふさわしく、その語り口の魅力とともに、深い感銘を呼び起こすお話でした。それは、今なお鮮やかな珠玉の記憶として残っております。

このことがご縁となって、今日までの七年間、本学の客員教授として講義をしていただいております。学生のみなさんはもとより、教職員の間でも、蝶六先生という名で親しまれ、本学にとってかけがいのない先生のお一方です。

本学は、建学の精神をうけて、日本の文化と伝統に深い思いをよせる教育を行っております。そのことからも、蝶六先生の存在とこのたびの御襲名は、私どもにとって誠に誇らしく、これからの桂 花團治様の益々のご活躍とご発展をお祈りし、心から声援を送る次第でございます。

大阪青山大学 学長 塩 川 和 子