蝶六さんの教え
「左右の拳に視線を移動させるのが基本」─両腕を肩幅に突き出し、登場人物を演じ分けて見せてくれた蝶六さん。韓国の語り物芸・パンソリの唱者として舞台に立つ私にはとても大きな教えでした。また、教会に響く“天に昇る声”とは違う、お寺に染み渡る“地を這う声”の重要性─狂言の謡い、浪曲の唸り、落語の語り、パンソリの唱に共通する東洋独特の喉声文化の豊かさに気付かせてくれたのも蝶六さん。そして、観る者と演じる者が分かれることなく、ともに物語を旅することの楽しさ、物語に描かれる人間の愛すべき愚かさやぬくもり、たくましさや気高さを教えてくれたのもやはり蝶六さんです。
どうかこれからも、研究熱心で勉強家、ちょっとアツくるしいあなたのままで、どんどん深く大きくなられ、今まで以上により多くのことを私たちに教えてください。三代目・桂花團治襲名を心からお祝い申し上げます。
パンソリ唱者 安 聖 民
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