蝶六さん──と、気安く酒を呑みふざけていた昨日までと違うのかと思うと、ちょっとさびしい気持ちになります。
私は競馬実況アナウンサーとして60年間8万8千レースを喋ってきましたが、聞いてくれる相手は常に背中。その点、落語家さんは舞台を独り占めにして、観客を全員自分に向けさせ、こんなに羨ましいことはありません。
「相づちは魔法の言葉」といいますが、相づちをしっかり受け止めながらこれから花團治師匠として立派に舞台をつとめられることを祈ります。
あなたならできる。あなただからできる。初めて会った時からそう信じてきました。三代目を継がれることでこれまでのように気楽に酒が呑めなくなる、ふざけられないなんてことのないよう「酒を呑むのは時間のムダ、呑まないのは人生のムダ」の言葉を心に、今後益々“花”ある花團治さんになってください。
競馬実況アナウンサー 吉 田 勝 彦